みなさんこんにちは。ぐり工房代表・ガラス作家の森永久美子です。
数あるガラス制作工房のサイトからぐり工房にお越しいただき、ありがとうございます。
ぐり工房は、私が2002年から自宅の一室でガラスアクセサリーを制作し、鎌倉のガラス工芸のお店に委託販売させていただいたところからスタートしました。15年くらい自宅を制作場所に1人で活動していましたが、ご縁があり自宅とは別の場所で小さな工房を作り、だんだんお仕事が増えていき、スタッフがひとりまたひとりと増えていき、スペースも段々と広くなって、今は神奈川県寒川町の可愛い工房で、数人のスタッフと生徒さんや作家さんやお客様と、毎日楽しくガラス制作をしている工房です。
ここでは、私の、ガラスと向き合ってきた約25年の想いをお話しさせていただきます。
私がガラスに魅入られたのは高校生の時です。幼い頃から工作が大好きだった私は、小学生になるより前から美大に行こうと決めていました。
その想いは高校生になってもかわらず漠然と持っていたのですが、受験が現実のものとなってきて、美大の中にもたくさんの選択肢があることを知りました。
絵やデザインよりモノづくりがいいとは実感していましたが、どの素材をやりたいのか?と自問自答し始めました。
当時、私は鎌倉に住んでいて、学校の帰りに若宮大路に寄り道し、ガラスのお店をちょくちょく覗いていました。鎌倉にはガラスのお店がいくつかあって、作家さんのアクセサリーや作品が多く、見ているだけでも飽きない場所でした。
そんな中、あるお店でガラス製のペンダントトップに釘付けになりました。
それは、雫型の透明なガラスの中に金色の筋のような曲線が閉じ込められていました。その繊細な金の帯は、光に反射してきらきらと複雑に煌めいたいました。
「ガラスでこんなことができるなんて...私もやってみたい!」
その時から私とガラスの付き合いが始まりました。
美術大学でガラスに没頭した4年間は、とても充実していました。生活のほぼ全てを創作活動や作家としてのアイデンティティの探求に費やし、同じ志を持つ仲間と一緒にモノを創り出す楽しさに溢れていました。
卒業後は、美大時代に評価されたボディペインティングを手がけていたこともありました。女性の身体にその人の個性に合わせた絵を描いていく。それは、女性の美しさをさらに際立たせお祝いのセレモニーなどの特別な演出にぴったりでした。
その後、結婚、出産。我が子が幼い時は育児に専念しよう、とガラスからも創作からも遠ざかりました。それは、私の人生で初めて創作をしない日々でした。子育ては楽しいのに、創作できない時間が長くなるにつれ、私は自分のアイデンティティが分からなくなってきました。
「作っていない私は、私ではない」
どんなに家族を愛し日常の営みを愛していても、創作のない世界に生きることは、とても居心地がわるく感じられたのです。
長男が2歳になり保育園が決まった2002年に、実家のプレハブ小屋の一角を借りて酸素バーナーを設置し、ホウケイ酸ガラスのアクセサリーの制作と委託販売を始めました。
ガラスアクセサリーの制作・販売を始めた当初の私は、創作できる喜びには溢れていましたが、アクセサリーを作ることは、美大で培った自己表現を発揮する場ではないな、という違和感を感じていました。
10年間、子育てをしながらアクセサリー制作を続けた私は、長年の念願だった個展をすることを決め、封印していた自己表現を思うままに発揮しました。
個展には、美大時代の友人や尊敬する先輩・後輩が見に来てくれて、私もまだ創作活動をしているよ、というメッセージを送ることができました。2年の間に3度の個展を開き、私は一度燃え尽きたような感覚に陥りました。誰もやっていない新しい表現を、みんなを驚かせるような奇抜なアイディアを探すことに、再び違和感を感じたのです。
"自分の喜びの源は、本当はどこにあるのかしら?" またしても自分のアイデンティティに直面しました。
ある時、私のアクセサリーを購入してくれた友達に会う機会がありました。彼女は「ぐりちゃん(高校時代からの愛称です)の作品、いつもつけてるよ!」と本当に嬉しそうに言ってくれました。
それは、私に対するお世辞や気遣いというものではなく、心からそう想っていると感じられる言葉と笑顔でした。 それだ!そんなシンプルなことに、やっと気づきました。
誰かが手にして喜んでくれるものをつくることが、私の喜びの源なんだ、と。
この出来事をきっかけに、自分発信のデザインから、お客様が付けて"嬉しい""ワクワクする""いきいきする"デザインに変わりました。
手にした人に喜んでもらうために、私の技術を注いでいこう
しずく一粒にだって、美しい曲線とそうでない曲線がある
その美しさを表現するために
納得いくまで妥協しない誇りを持とう
1つ1つに、そして細部にまで心と愛と技術を込めよう
使ってくださるお一人お一人を裏切らない
強度と曲線美と可愛らしさを届けられる作品をつくろう